本書は、ゲーム制作の現場で活躍してきた著者が、日本のゲームにおける「人を夢中にさせるノウハウ」を「ゲームニクス理論」と名づけ体系的にまとめ、更にその理論をゲームという枠を超えて普遍的に応用できることを解説したものである。
専門用語はほとんどなく、文体も敬体で書かれているので気軽に読める本だ。ゲームが大好きな人はもちろんだが、ゲームに疎い人、いいイメージを持っていない人にこそ読んでもらいたい。
第一章 なぜ、子供は食事を忘れるほどゲームに夢中になるのか?
子供たちは初めて手にするゲームでも説明書は読まない。さらに、飽きっぽく一つのことになかなか集中することができないものである。そんな子供たちに遊んでもらうために、ゲームには「マニュアルなしでも操作できるようにするための工夫」「熱中させるための工夫」がかかせなかった。
第二章 ゲームニクス論 総論
人を夢中にさせる秘密、ゲームニクスの4大原則
1、直感的なユーザー・インターフェイス
2、マニュアルなしでルールを理解してもらう
3、熱中させるための演出と段階的な学習効果
4、ゲームを現実とリンクさせリアルに感じさせる
第三章 “任天堂一人勝ちからわかること”
DSやWiiは「子どもからお年寄りまでがすぐに使い方を理解でき、いつの間にか使いこなせるようになる」という目的をクリアしていたからこそヒットし、新しいユーザーも獲得できたのだ。
第四章 iPod、グーグル、ミクシィ……本当のヒットの理由は?
iPodの操作パネルと階層式になっているメニュー画面、グーグルのシンプルなトップページ、ミクシィのトップページの構成……これらにはゲームニクス理論の原則にかなっているという共通点があった。
第五章 ゲームニクスが医療・福祉・教育分野を救う
中学校でDSを使った授業が行われ、英語の語彙力が上がるという結果が出た。
医療現場でもリハビリテーション専用機器ではなくゲームを使うことによって患者が積極的にリハビリを行うようになり、効果も上がった。ユニバーサルデザインの原則にも似たゲームニクス理論は、教育や医療の現場でもおおいに活用できるだろう。
第六章 ゲームニクスが日本の未来を明るくする
高齢化が進む今、情報弱者をなくすことがこの国の重要な課題のひとつである。そこで必要なのがインターフェイスの操作性の向上等、幅広い意味での情報アクセシビリティの向上である。これからの日本に求められるのは技術ではなく使いやすさである。
(文責:大宮)
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