本書は誰もが知っているゲームである『パックマン』の生みの親である岩谷徹氏が、ゲームクリエイターとしてのこれまでの経験を通して、ゲームクリエイターにとって必要なことなどをまとめた本である。本の内容は筆者の体験を元にして展開されているので、読み手にとってとてもわかりやすく、ポイントとしても非常にまとまっている印象を受けた。アイデアを生み出す基本的な手法、それを形にする方法、そこに起こる問題点や解決法など、クリエイターの教科書ともいえる内容に仕上がっている。これからゲームクリエイターを志す人には是非とも読んでもらい一冊であるし、原点に一度立ち返るという意味で、現在ゲームクリエイターの方にも読んでほしい一冊である。
内容としては、大きく3つに分かれている。まずCHAPTER.1では、岩谷氏のゲームクリエイターとしての原点が何であったのか、パックマンが生まれるに至った背景など、岩谷氏のゲームクリエイターとしての歴史といえる部分がまとめられている。
次にCHAPTER.2やCHAPTER.3では、ゲームクリエイターとして歩んできた自らの体験などを通して、ゲームクリエイターという職業にとって必要なことが具体的にまとめられている。哲学などの内容も取り入れつつ話が展開されていたので、「なるほど」と納得しつつ読める。最後に宮本茂氏・小口久雄氏・糸井重里氏・浜野保樹氏・中村雅哉氏の業界のカリスマともいえる人達との対談がまとめられている。
現在ゲーム産業は成熟し、頭打ちの状態であるといわれている。そこではゲームの「複雑化」や「大容量化」という一方向のベクトルに向かってきた成長の仕方の問題があると私は考えている。そもそも「遊び」の面白さとはなんなのか。「ゲーム」とはいったいその「遊び」の中でどういうものだったのか。ゲームクリエイトという仕事の面から見た、現在のゲーム産業に起こっている問題の根本が本書の中に見え隠れする気がする。
(文責:田中)
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