元経済記者である著者が辿る、秋葉原電気街、伝説の仕事師・竹川博久の半生をつづったノンフィクション。昭和41年、秋葉原駅に裸一貫で降り立った青年は、電化製品のディスカウント販売、いわゆるバッタ商法で、業界の風雲児となる。メーカーや同業者のあらゆる妨害を人脈と斬れまくる頭脳のみでかわす一匹狼。商品金融、手形割引などでも連戦連勝。高度成長期、パソコンブーム、バブル景気の波に乗り、やがてその年商はついに50億円を越える。竹川の完全勝利かと思われた、その時・・・。
バッタ家電は、昭和期のメーカー小売価格制の裏をついた商法だが、バブルがはじけた後の家電業界の姿も出てくるため、大昔の話という印象はない。残念ながら、コンシューマ機の話題は一切出てこないが(ファミコンにはうまみが少なかったのだろう)、一方で、NECのPC-8801や富士通のFM-7といった、日本ゲーム史上欠かすことの出来ないパソコン達が、いかにおいしい商材であったのかが、この本を読むとよくわかる(「ペテン師」の章)。 ちなみに、自分が秋葉原に始めて出向いたのは確か高校生の頃だったが、竹川氏の経営する(していた)「マヤ電機」の名前は、その店を利用したことがなかったにも関わらず、不思議と記憶に残っていた。中央通を北へ。華やかな駅周辺街から比べれば少し落ち着いた場所だった(そしてその隣りにはあのマハポーシャがあった。本書にはその対決の様子も出てくる)。その他、フリージア家電やSTEPといった、行ったことがなくとも”なぜか”記憶に引っかかっている店が、実は竹川氏と関係があったのが興味深い。そういえば、自分が初めて買ったウォークマンは秋葉原のバッタ屋だっけ。
<目次>
・青雲の志
・破竹の勢い
・大勝負!
・無から有を生め
・二人の教祖
・裏切り
・ノルマ哀れ
・経済やくざ
・ペテン師
・仕入れの妙味
・ハルシオン狂乱
・利益なき繁忙
・我は我なり
(文責:藤田)
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