ゲーム制作の現場でディレクターであった著者が、ゲーム業界をディレクターという視点からまとめた本である。この本は、ゲームに興味を持ち始めた人のゲーム業界入門書としても、ゲーム業界を志望する人、ゲームに対して真剣に取り組んでいる人に対する指南書としても、魅力的な本である。また、ゲーム制作におけるチームの在り方も書かれており、会社や学校でチームで何かをするという人にとっても一読の価値があるといえる。
第1部 ゲーム作りと企画のヒント
この部はゲーム制作者に向けて書かれたようなところがあるが、これから先のゲーム制作において大切なことをこの部でまとめている。しかし、テレビゲームは「デジタル技術な遊び」であると定義した上でロジェ・カイヨワの遊びの研究やゲームの多様性、インタラクティブ性についても述べているため、ゲーム制作に関わりのない人にも読み応えのある内容になっている。
第2部 ゲーム制作者とソフトメーカーの行方
制作者に求められる資質やゲーム業界における人材の枯渇の問題とソフトメーカーの
これからについて述べられている。人材の枯渇の問題に関連して、デジタル放送が
始まったことにより、放送業界において、ゲーム制作者のノウハウをが求められて
きていることについて触れ、人材の流動化が起こっていることも述べられている。
第3部 ゲームマシンとフォーマットフォルダ
家庭用デジタルコンテンツの総合端末としてのPS2とX-box、純粋なゲーム機としての
ゲームキューブの違いについてまとめられている。また、他の本でも取り上げられて
いる内容ではあるが、任天堂、SCE、その他ゲームマシンメーカーのビジネスモデルに
ついて分かりやすくまとめられている。
第4部 ゲーム業界の現状と未来
ITとゲームの関係に触れながら、流通、制作システムの変化について述べている。
ゲーム離れが深刻な問題になっているゲーム業界は、在庫管理の効率化やネット販売と
という方法でITを使ってこのような事態を何とかしようとしており、制作現場において
もITが導入されているという内容である。また、新しく登場してきたネットゲームや
これからのゲーム業界の展望についても述べられている。
第5部 これからのゲーム性を考える
これからのゲーム性を考えるにあたって「エデュテイメントの可能性」、「キャラクター
というゲーム性」、「やらなくても良いゲーム性」という3つのものが考えられるという
内容である。この3つは、今まで考えられてきたようなゲームとは違った新しいゲーム性
であると思われ、非常に興味深い内容になっている。
付録:未来のためのヒント(クリエイター・インタビュー)
「牧場物語」の和田康宏氏が「人とゲームの関係」や「牧場物語の誕生秘話」について、
メディアアーティストの山口優氏が「ゲームの中の音楽」について、「ポストペット」
八谷和彦氏が「面白さとテクノロジーとコスト」について著者のインタビューに答える
という内容になっている。
(文責:奥村明子)
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