LLC/LLPという有限責任の新しい人的組織形態へのニーズは、これまでの先行研究によれば、1)大学発ベンチャーなど、起業家、協力企業、研究者が出資の多寡を問わず事業の成果を享受する必要がある組織、2)映画やゲーム(いわゆるコンテンツ系産業)など、製作に多額の資金、著作権管理などの専門的ノウハウ、多様な専門人材の参集、が必要なプロジェクト・ベースのビジネス、3)共同研究開発のためのジョイント・ベンチャーなど、複数の法人がそれぞれの専門的能力を持ち寄らなければならない事業、などに特に高いと言われている。LLC/LLPでは、株式会社に比べてより内部自治の自由度が高く、出資者間で組織設計を柔軟に決められることが、そう言われる理由と考えられる。しかしながら、根拠法施行後まだ日が浅いこともあり、わが国でこれまでに設立されたLLC/LLPが実際にどのようなビジネスで、どのような条件のもとで、うまく機能するのか、といった具体的な研究・分析はまだ全くなされておらず、産業界からのそういった研究成果へのニーズは極めて高いと思量される。
上述のニーズに応えるべく、総合大学である本学の強みを生かし、本プロジェクトでは複数の学部・研究科(映像学部・法学部・経営学部・テクノロジーマネージメント研究科)から研究メンバーが参加し、分野融合型の研究に取り組む。具体的にはパイロット・プロジェクトとして、1)大学発ベンチャーなどテクノロジー・インキュベーション・プロセスにおける組織形態としてのLLC/LLPの有用性、2)コンテンツ・ビジネスにおけるLLC/LLPの有用性、3)LLC/LLPと他の組織形態(株式会社、SPC、信託スキームなど)との比較分析、の三つをスタートさせる。産業界との連携も深めながら、具体的なケース分析からLLC/LLPに関するGrounded Theoriesの構築を目指す。
|