第6回ゲームサロン 『ゲームアカデミズムの確立を目指して』〜ゲームに対する偏見との闘い〜 講師 茨城大学大学院教育学研究科卒 八尋 茂樹氏 【近藤】 |
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三つ目は、ドラゴンに対する日米のイメージ差だ。
日本でのドラゴンのイメージは、中国からの大陸文化の影響を強烈に受けた龍である。一方、アメリカのものは、欧州、キリスト教文化から産まれたDragonである。このような一種の宗教観、世界観から来るギャップである。 四つ目は、識字問題における日米の教育事情が考えられる。 日本では、ほとんどの人が日本語を読み、書くことができる。しかし、アメリカでは、移民の急増から、識字率は大幅に低下している。その中で、「ドラクエ」などの、テキストの量が非常に多いゲームは、敬遠されがちである。 次に、移植に際してゲームソフトの内容の改ざん、削除の問題を日米の文化的、社会的事情から、八尋氏は、次のように分析している。 (1)宗教に関する表現 では、宗教、教会に関する表現は全て、削除されている。その徹底ぶりは、教会が学校に代わり、棺桶の十字架が塗りつぶされるまで至る。これは、宗教的に複雑な要素を含むアメリカの社会の現状を踏まえたものと考えられる。 (2)性(暴力)に関する表現 では、原作の日本語版においても、かなりの制限が加えられているが、アメリカ版では、さらに厳しいチェックが行われ、特に性的な連想をさせる表現は一切、削除 |
されている。これは、性解放が進んでいるというイメージが先行しがちなアメリカで、実際には、性的犯罪の多発に苦慮しているアメリカの事情を考慮したものと考えられる。
(3)マイノリティーへの差別的表現 では、マイノリティーや人種差別を連想させる人名や組織の名前が、変更されている。これは、「人種のるつぼ」と形容されるアメリカの他民族国家が持つ種々の問題に、配慮したものと考えられる。 このようにゲームソフトの内容は多岐に渡って改ざん、削除されているのである。また、アメリカでは、使用者である子供よりも、購入者である親の意見が強い為、日本の企業も親に対するイメージ作りが盛んで、彼等の気分を害さないような作品作りに神経を尖らしている。その他、海外への翻訳チームがごく小数で行われ、テキストの文学性を壊しているという面も、否定できない。 これら全てのことを踏まえて、八尋氏は、日本のテレビゲーム界の現状を憂える。そして改めて、「日本の経済のみならず、文化的、社会的に影響の有るゲームに関して、アカデミックに分析する必要があるのではないか。」と説く。 確かに、今の社会の態度は、宝の詰まった宝石箱を前にして、箱を開けて中の宝物を鑑定しない質屋の態度に似ている。輸出可能な新たな日本文化、教育事業へ |
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