デジタルアーカイブ・ビッグバン京都'98
セッション 『KYOTO BORN AGAIN』
【たぐち】

 1998年12月8日から10日まで開かれたデジタルアーカイブ・ビックバン京都'98の初日に行われたセッションの「デジタルアーカイブ産業化フォーラム KYOTO BORN AGAIN」に参加してきました。
今井賢一スタンフォード大学教授(京都府中小企業総合センター所長)と松岡正剛編集工学研究所所長(東京大学客員教授)の二人を中心として多数の著名人がぞくぞく登場し、対談・鼎談の形式で行われました。

 京都の文化・産業の振興やその展望、それらのデジタルアーカイブ化という新しい息吹について、多くのお話を拝聴することができました。
 一部は、「花鳥風月デジタルアーカイブ」。今回、松岡氏の編集工学研究所が、京都府と一緒になって制作した「景色景物景気集 THE MIYAKO」の紹介を軸にしてデジタルアーカイブについてお話をされました。冒頭では、デジタルアーカイブを、「記憶の劇場」「連想の劇場」と表現されていました。
 この「THE MIYAKO 」は、京都が擁する様々なコンテンツ、例えば神社仏閣、川や町、道などをデジタル化したマルチメディアデータベースなのだそうです。  紹介のデモビデオでは、画像と画像がリンクしている、という印象が強く、また、京ことばの語り部をつけたり、効果音をつけたり、と「華やかな」アーカイブでした。  連鎖・連想という考え方が多く反映されており、細部まで連鎖している
ことに驚きを覚えました。連想という考え方で面白かったのは「花鳥風月型連想」というものでしょうか。
 ひとつのオブジェクトから5つのタイプの連想リンクがあり、同類のもの/親類/原型など、連想のアプローチ方法を分類しているのです。 連想はデジタルアーカイブを面白くするメタファーの一つ。関係性に着目した分類という発想はGAPにも必要になるかもしれません。
 この「THE MIYAKO」は「インテリジェント・パッド」という技術を活用しているそうです。インテリジェント・パッドとは、ポストイットのようにコンテンツを重ねたり付け加えたりが自由にできる「かしこい紙」で、今井氏はこの技術を使えば様々な人の手によって情報が付け加えられ、アーカイブ事体が変化・進化していける、そのことが今後のアーカイブにとって必要な機能だと強調しておられました。  「成長する、アーカイブ」。情報を付加する機能が実現できれば、面白い試みですね。

 第二部の「敬承と再生の技術」では能楽師の金剛永謹氏、衣装デザイナーのワダエミ氏、陶芸家の楽吉左衛門氏の三人がパネリストとして登場されました。  金剛氏は、能の継承というものについてお話され、室町時代の能の面なども拝見しました。衣装デザイナーのワダエミさんは、黒澤明監督の映画で数多くの衣装を手掛けた方。  スライドでは「乱」「利休」などの映画で使用された鮮やかな衣装が紹介されていました。  衣装デザインのアイデアをど
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