デジタルアーカイブ・ビッグバン京都'98
セッション氈@『デジタルアーカイブ国際会議'98京都』
【山根】

■江戸東京博物館

 三人目はUNESCO「文化のための新技術局」の職員、松本慎二氏が世界遺産にデジタルアーカイブの発想を活かせないだろうかということで、例として世界遺産に指定された建築物を24時間写すカメラを設置してその映像をリアルタイムでWeb上に配信するという案を話されました。 これは貴重な現物の補完機能という、デジタルアーカイブの目指す利用法についての一つの重要な示唆だと思います。さて最後はノンフィクション作家の山根一眞氏をコーディネーターに、国内外から集まったデジタルアーカイブについて一家言ある方・現在デジタルアーカイブを商業利用されている方をパネリストに迎えてのシンポジウム「デジタルアーカイブの利活用と知的財産権の円滑的処理策への提言」が行われました。

 話題の中心となったのは、やはり法律絡み話とデジタルアーカイブ自体にかかるコストの問題です。
 例えばデータを保存しておくメディア自体の陳腐化ヘの対応や著作権利用の許諾をもらいに行くコーディネイト作業といった地味な仕事の重要性について話されたのは、フランス国立美術館連合(RMN)フォトエージェンシー部長であるミシェール・リシャール氏で、実際にデジタルアーカイブを商業ベースで活用していくための大変さをこのほかにも色々と語って下さいました。
 現在氏の勤めるフォトエージェンシーも経済的には苦しい状況だそうです。
 日本のデジタルアーカイブの現状については、椙山敬士(弁護士/デジタルアーカイブ推進協議会利権問題研究会代表)氏が法制度の遅れを嘆いておられたり、中川久定(京都国立博物館館長)氏が2001年から独立行政法人として経営が自分たちの仕事になることを挙げて、現状のままでは残すものとそうでないものとを考えないといけないかも知れないといったシビアな意見が相次ぎました。(現在、日本の博物館における入場料収入は全体予算の10%にしかなっていないそうですから、現状のままで行けば中川氏の危惧されている議論が真実味を帯びることになるでしょう。)

 総論としては、デジタル化が求められていることは間違い無いが、その利用に際し、法整備や実際上の課金制度などクリアすべき問題が山積している。これからも皆さん協力しあって頑張りましょう、といったところでしょうか。
 みなさんはデジタルアーカイブについてどのようにお考えでしょうか。 その未来を決めるのは実はユーザーである我々一人ひとりです。
 先人達の作り上げた素晴らしい文化を受け継ぎ利用するための新しい可能性、デジタルアーカイブの未来を私たちも考えてみませんか。
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